てらポチの大阪弁講座 LESSON 1 動詞
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 動詞の活用
共通語と共通する語彙の他、共通語に存在しない、大阪弁や近畿方言の俚言(*1)とされる語彙を交えた表となっております。

*1 俚言:共通語に存在しない方言特有の語彙の事で、大阪弁では「ちゃう」「あかん」等がそれにあたります。

(表内記号の主な注意)
【京】:京都方面で主に使用されている、の意。
【神】:神戸方面で主に使用されている、の意。
【摂】:北摂・阪神地域と近隣の大阪市・神戸市方面で主に使用されている、の意。
ただし、これらの地域のみで使用されているという意味ではありません。
活用 未然 連用 終止 連体 仮定 命令
五段活用
行く カ行五段 いかん
いけへん
(いかへん)

いこ(う)
いきます
いって
いく いく時 いったら いき
いきぃ
書く カ行五段 かかん
かけへん
(かかへん)

かこ(う)
かきます
かいて
かく かく時 かいたら かき
かきぃ
騒ぐ ガ行五段 さわがん
さわげへん
(さわがへん)

さわご(う)
さわぎます
さわいで
さわぐ さわぐ時 さわいだら さわぎ
さわぎぃ
ほかす
(意味:捨てる)
サ行五段 ほかさん
ほかせへん
(ほかさへん)

ほかそ(う)
ほかします
ほかして
ほかす ほかす時 ほかしたら ほかし
ほかしぃ
立つ タ行五段 たたん
たてへん
(たたへん)

たと(う)
たちます
たって
たつ たつ時 たったら たち
たちぃ
死ぬ ナ行五段 しなん
しねへん
(しなへん)

しの(う)
しにます
しんで
しぬ しぬ時 しんだら しに
しにぃ
飛ぶ バ行五段 とばん
とべへん
(とばへん)

とぼ(う)
とびます
とんで
とぶ とぶ時 とんだら とび
とびぃ
読む マ行五段 よまん
よめへん
(よまへん)

よも(う)
よみます
よんで
よむ よむ時 よんだら よみ
よみぃ
分かる ラ行五段 わからん
わかれへん
(わからへん)

わかろ(う)
わかります
わかって
わかる わかる時 わかったら わかり
わかりぃ
ある ラ行五段
特殊
あれへん
(あらへん)
あります
あって
ある ある時 あったら
「ある」では「〜ん」型の否定は聞かれません。
知る ラ行五段
特例
しらん

しろ(う)
しります
しって
しる しる時 しったら しり
しりぃ
「知る」では「〜へん」型の否定は聞かれません。
買う ワ行五段
ウ音便
かわん
かえへん
(かわへん)

かお(う)
かいます
こうて
かう かう時 こうたら かい
かいぃ
言う
(読み:ゆう)
ワ行五段
ウ音便
ゆわん
ゆえへん
(ゆわへん)

ゆお(う)
ゆいます
ゆうて
ゆう ゆう時 ゆうたら ゆい
ゆいぃ
思う ワ行五段
ウ音便
(ウの省略)
おもわん
おもえへん
(おもわへん)

おもお(う)
おもいます
おもて
おもう おもう時 おもたら おもい
おもいぃ
笑う ワ行五段
ウ音便
(ウの省略)
わらわん
わらえへん
(わらわへん)

わらお(う)
わらいます
わろて
わらう わらう時 わろたら わらい
わらいぃ
ちゃう
(意味:違う)
ワ行五段
特殊
ちがわん
ちがえへん
(ちがわへん)

ちがお(う)
ちゃいます
ちごて
<ちゃうかって>
ちゃう ちゃう時 ちごたら
<ちゃうかったら>
<>内のように、形容詞のような活用の形態をとる事があります。参考:「ちゃう」の過去形=「ちごた」または「ちゃうかった」
上一段活用
起きる カ行上一段 おきん
おきひん
(おけへん)

おきよ(う)
おきます
おきて
おきる おきる時 おきたら おきぃ
(おけぇ)
着る カ行上一段
語幹長音化
きん
きぃひん
(けぇへん)
きよ(う)
きます
きて
きる きる時 きたら きぃ
(けぇ)
出来る カ行上一段
特殊
できん
でけへん
できひん【京】
できます
できて
できる できる時 できたら
感じる ザ行上一段 かんじん
かんじひん

かんじよ(う)
かんじます
かんじて
かんじる かんじる時 かんじたら かんじぃ
落ちる タ行上一段 おちん
おちひん

おちよ(う)
おちます
おちて
おちる おちる時 おちたら おちぃ
見る マ行上一段
語幹長音化
みん
みぃひん
(めぇへん)
(みやへん)

みよ(う)
みます
みて
みる みる時 みたら みぃ
(めぇ)
下一段活用
考える ア行下一段 かんがえん
かんがえへん

かんがえよ(う)
かんがえます
かんがえて
かんがえる かんがえる時 かんがえたら かんがえ
かんがえぇ
居てる
(意味:居る)
タ行下一段
特殊
いてへん
<いぃひん>

いてよ(う)
いてます
いてて
いてる いてる時 いてたら <いぃ>
<>で括っている部位は、「居る」の活用の借用部分
出る ダ行下一段
語幹長音化
でん
でぇへん
(でやへん)

でよ(う)
でます
でて
でる でる時 でたら でぇ
寝る ナ行下一段
語幹長音化
ねん
ねぇへん
(ねやへん)

ねよ(う)
ねます
ねて
ねる ねる時 ねたら ねぇ
食べる バ行下一段 たべん
たべへん

たべよ(う)
たべます
たべて
たべる たべる時 たべたら たべぇ
サ行変格活用
する サ行変格 せん
せぇへん
しん【京】
しぃひん【京】
(しやへん)

しょう
します
して
する する時 したら せぇ
(強い命令)
しぃ
(弱い命令)
勉強する サ行変格 勉強せん
勉強せぇへん
勉強しん【京】
勉強しぃひん【京】
(勉強しやへん)

勉強しょう
勉強します
勉強して
勉強する 勉強する時 勉強したら 勉強せぇ
(強い命令)
勉強しぃ
(弱い命令)
カ行変格活用
来る カ行変格 こん
けぇへん
きぃひん【京】
こぉへん【神】
こえへん【摂】
(きやへん)

こ(う)
こよ(う)
きます
きて
くる くる時 きたら きぃ
出て来る カ行変格 でてこん
でてけぇへん
でてきぃひん【京】
でてこぉへん【神】
でてこえへん【摂】
(でてきやへん)

でてこ(う)
でてきます
でてきて
でてくる でてくる時 でてきたら でてきぃ
備考
未然形 「〜ん」型の否定の方が、「〜へん」型の否定よりも否定の度合いが強いです。
括弧内の表現は現在あまり一般的でない言い方、または使用頻度の低い言い方のものです。
五段活用動詞の「〜へん」型の否定は「連用形+へん」となります。
「未然形+へん」でも間違いではありませんが、これは京都弁寄りの表現です。
上一段活用動詞の「〜へん」型の否定は、基本的に「未然形+ひん」となります。
括弧(う)は、強調の終助詞「な」「や」(共通語の「よ」、強調度:な<や)のつく時に用います。
例:「今のうちに行こうな」「早よ行こうや」
勧誘の終助詞「な」(共通語の「ね」)のつく場合や、
疑問の終助詞「か」のつく場合は(う)をつけずに続ける事が多いです。
例:「一緒に行こな」「行こか」
「〜と言う」「〜と思う」が続く場合は、(う)の有無はこだわらなくて構わないと思われます。
例:「今行こ思ててん」「今行こう思ててん」
仮定形 大阪弁では「行けば」「行ったら」の仮定形は区別せず、
ほぼ全ての仮定表現を「行ったら」「書いたら」等「〜たら」型の使用で済ませます。
ただし、「例えば」「そういえば」等の、文頭の接続詞の役割を果たす成句については例外扱いとなっています。
命令形 語尾を延ばさない形の方が、命令の度合いが強いです。
括弧内の表現は現在あまり一般的でない言い方のものです。
命令形のあとに、強調のための終助詞「な」「や」(強調度:な<や)をつけて使用する事が多いです。
例:「そんな事してんと早よ行きぃや」
 可能動詞と不可能表現
「動詞の否定」表で扱われた一般動詞の可能動詞と、
その否定表現(不可能表現)を「〜へん」型、「よう〜ん」型、「〜ん」の3タイプに分類して以下の表に記載しました。
3タイプの使用方法とつくりかたは、以下の通りです。

使用方法 つくりかた
「〜へん」型 状況・環境の問題による不可能、
能力・力量の問題による不可能を表す場合。
五段活用動詞の可能動詞の否定形は、
「一般動詞の未然形+れへん」となります。
例:「行か+れへん」「読ま+れへん」
上一段活用及び下一段活用、
カ行変格活用動詞の可能動詞の否定形は、
「一般動詞の未然形+られへん」となります。
例:「起き+られへん」「食べ+られへん」「来(こ)+られへん」
「よう〜ん」型 能力・力量の問題による不可能、
気持ちの問題による不可能を表す場合。
(=(「とても〜する気になれない」)
「よう」と「ん」の間に、一般動詞の未然形を挿入します。
例:「よう+せ+ん」「よう+行か+ん」「よう+食べ+ん」
「〜ん」型 「〜と」に接続して
「〜んと」(訳:〜ないと)の形を作る場合。
可能動詞の終止形の「る」を「ん」に置き換えます。
例:「行け+ん」「起きれ+ん」「食べれ+ん」
備考
例文 「停電やから真っ暗で本読まれへんわ」 状況の問題で不可能
「この英文出てくる単語がむつかし過ぎて読まれへんわ」 能力の問題で不可能
「この英文出てくる単語がむつかし過ぎてよう読まんわ」
「人前で官能小説なんてよう読まんわ」 気持ちの問題による不可能。「とても読む気になれない」。
「高校生やねんしこれくらいの漢字読めんと将来困るで」 「〜んと」の形で
一般動詞 可能動詞 可能動詞の否定 (不可能表現)
「〜へん」型 「よう〜ん」型 「〜ん」型
行く 行ける いかれへん よういかん いけん
書く 書ける かかれへん ようかかん かけん
騒ぐ 騒げる さわがれへん ようさわがん さわげん
ほかす(意味:捨てる) ほかせる ほかされへん ようほかさん ほかせん
立つ 立てる たたれへん ようたたん たてん
死ぬ 死ねる しなれへん ようしなん しねん
飛ぶ 飛べる とばれへん ようとばん とべん
読む 読める よまれへん ようよまん よめん
買う 買える かわれへん ようかわん かえん
言う(読み:ゆう) 言える(読み:ゆえる) ゆわれへん ようゆわん ゆえん
思う 思える おもわれへん ようおもわん おもえん
笑う 笑える わらわれへん ようわらわん わらえん
起きる 起きれる おきられへん ようおきん おきれん
着る 着れる きられへん ようきん きれん
感じる 感じれる かんじられへん ようかんじん かんじれん
落ちる 落ちれる おちられへん ようおちん おちれん
見る 見れる みられへん ようみん みれん
考える 考えれる かんがえられへん ようかんがえん かんがえれん
居てる(意味:居る) 居てれる
<居れる>
いてられへん
<いられへん>
[ようおらん] いてれん
<いられん>
< >で括っている部位は、「居る」の活用の借用部分。[ ]で括っている部位は、「おる」の活用の借用部分。
出る 出れる でられへん ようでん でれん
寝る 寝れる ねられへん ようねん ねれん
食べる 食べれる たべられへん ようたべん たべれん
来る 来れる こられへん ようこん これん
出て来る 出て来れる でてこられへん ようでてこん でてこれん
備考
可能動詞 大阪弁の可能動詞は、共通語から見ると文法的誤りとされるラ抜き型の表現が正式なものです。
例:共通語「起きられる」 大阪弁「起きれる」
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